心のふるさとはへその下(上)

   心とは、妙なものである。片時もじっとしていない。 常にころころ変るから、こころとなったといわれる。 お経の文句にこういうのがある。「応無所住而生其心 (おうむしょじゅうにしょうごしん)」
直訳すると「まさに住するところなくして、その心 を生ずべし」。わかりやすく簡単にいうと「心は一時 も停まらせず、サラサラ流し、次から次に生じるまま に任せよ」となる。
この文句は、心の真実(ほんとう)の姿を表現して いて興味深い。
 というのも、漢方では心身一体、つまり心の動きと 身体の作用は一事にみるから、もし精神(こころ)の 状態がどこにも澱みなくサラサラ流れているなら、同 時に血液循環も良好ということである。

 漢方の古典には、精神は五臓の所蔵なりと教えてい る。すなわち、心が怒れば気が逆上して言葉が激しく なり、身体は青くなって身震いし、肝を壊わすとある。 また、心が泣けば、言葉は涙にむせび、肉体は萎(な) え、肺を傷(や)ぶる、心が笑えば、言葉は朗らかに なり、手足は踊り、心臓の機能は円満円滑になる・・・。 と、このように心の持ち方によって、それが肉体にあ らわれ、ひいては臓器にまで及ぶと教えているのであ る。

(臓)(色)(部位)(五志)
肝−−青−−−自−−怒
心−−赤−−−舌−−喜(笑)
脾−−黄−−−口−−憂、思
肺−−白−−−鼻−−悲
腎−−黒−−−耳−−恐、驚

 心がどこにも澱みなく、執着なく、サラサラ流れ、 健康で明るいと、血液は弱アルカリ性(Ph七・三五前 後)になり、全身の細胞(全盛時は約六十兆個になる) は活性化され、外部からの侵入者(細菌等)の繁殖も 受けつけない免疫力を持つ。
 そういった意味では、心とは、常に宿を持たず渡り 歩く旅人のようなものである。が、ただ宿を持たない 旅人といっても、この旅人にも故郷(ふるさと)はあ るはずである。でないと、ただの無頼になる恐れがあ る。
 つまり、あまりにも心が開放され過ぎると、精神状 態がおぼつかなくなり、自ら暴走して破滅を招く結果 となる。特例だが、アルコールの作用で酩酊しで気が 大きくなり、失敗するのが、いい例だ。
 だから、心にも帰るべき家庭や故郷は必要なのであ る。そういうものがあれば、自らを節制し、心をコン トロールするからである。


Home 続く


最終更新日1996年11月24日 Kazueko Takamori kaz@kuc-jp.com